公益社団法人 地盤工学会 中国支部
岡山地域セミナー

・第6回目の岡山地域セミナーの見学会を、現地フィイールドでの地質巡検として行いました。参加者は総勢14名でした。

・「吉備高原は隆起準平原です。これは大昔の安定な環境で形成された小起伏面が現在も残っているものです。その形成に伴って堆積した山砂利層と中新統を観察します。中新統はたった10m程度の厚さしかないのに、1500万年たっても失われていないということは、当時の地形が所々残っているということでしょう。吉備高原地域の安定性について現地で意見交換できるかと思います。」
(以上鈴木先生の案内文書のまえがきです)

現地見学会の内容に関する質問や、感想等は下段伝言板に投稿できます。セミナー参加者以外の方も自由にどうぞ!


2021年度 第6回岡山地域セミナー 現地見学会・地質巡検概説

「吉備高原の長期安定性を示す地質、山砂利層や中新統」鈴木茂之先生(岡山大学)

「岡山の地学」山陽新聞社

(以下小林の「岡山県の地形・地質概説」と私的「まえがき」です)

岡山県の地形は大まかに、北は比較的急な中国山地脊梁部、中間部はなだらかな吉備高原、南部は平野部と瀬戸内島嶼部の3つからなり、それらを3大河川(吉井川、旭川、高梁川)が下刻侵食しながら流下して、瀬戸内海に注いでいます。その中の吉備高原には右の写真のように、多くの集落が発達点在しています。

吉備高原の山稜部に分布する山砂利層は、以前は新しい更新世の河川堆積物(超高位の段丘堆積層)と考えられていました。しかしながら岡山大学鈴木茂之先生らの長年の研究成果で、古第三紀の古い地層であることが明らかとなっています。

(以下各見学地での概説を記述しますが、現場状況写真はフォトギャラリーをご覧下さい)

・集合場所は御津スポーツパーク、参加者全員で集合写真を撮り、見学地①へ出発しました。

・見学地①では、道路沿いのり面および斜面に風乾褐色に変色した中小径亜円礫を含む山砂利層が露出し、山砂利層に接して基盤岩の泥質岩類(古生界)の連続露出を確認しました。山砂利層は傾斜約30゚程度の傾斜で基盤岩に接しており、アバット式不整合の関係を示していました。即ち山砂利層が侵食下刻された基盤岩の谷部を埋めるように堆積していることを示しています。

・移動した見学地②でも、道路沿いのり面の山砂利層から、基盤岩の泥質岩類(古生界)が露出していました。ここでも基盤岩の谷部を埋めるように堆積していることを示していました。

(右のPDF図面には、岡山市北西部における山砂利層の分布とその構造が詳細に記述されています)

・「みちの駅かよう」の見学地③では、駐車場脇ののり面で山砂利層を、また直近国道484号の擁壁上部のり面に中新世堆積岩(風化した砂岩)を確認しました。ここでは山砂利層の上位に中新世堆積岩が周囲の緩い地形と調和的に重なるように分布をしていました。

・賀陽ICから高速で移動、有漢IC出口近くの見学地④道路のり面では、広いのり面に成層した中新世堆積岩(風化した砂岩)を確認しました。そこではのり面上部自然斜面がほぼ平坦な状態で拡がっており、堆積岩の成層面とほぼ調和的な分布をしていました。


(下記右図は、上記見学内容を踏まえて吉備高原を東西方向の模式断面慨図として描いたものです)

吉備高原地形地質発達史

・吉備高原の形成後は、平坦な吉備高原面が断続的に連なることから、確かに安定した地塊であることを示していると言えます。

・しかしながらそれ以前の山砂利層の堆積時はどうでしょうか。基盤岩を深く穿つ侵食下刻作用による深い谷の形成、その後の谷埋め河川砕屑物の供給堆積、埋め尽くしてなお大量の河川砕屑物が供給されて広範囲に堆積し古い吉備高原が出来上がったのではないでしょうか。この時期は大規模な地殻変動により日本列島が大陸から離れたり、隆起や沈降が繰り返された時期でもあり、それらの侵食輪廻によって生じたものと推察されます。そしてその後地殻の沈降と海進とが相まって日本列島のかなりの部分が海域化して中新統が堆積、その後の寒冷化に伴い海退と隆起が進み、日本列島の原型が形成されたのでしょう。

・さらにそうした列島全体の隆起に伴い、古い吉備高原面に堆積していた山砂利層とその上位に堆積した中新統は一部を残して侵食削剥され流亡、更に基盤岩を侵食下刻しながら現在に至っているのでしょう。(と一人で夢想しました。最後は非常に駆け足でした)



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やっと現地見学会・地質巡検のまとめができました。地質屋小林の独断的な視点もありますが、他の皆様の現場に根差した知見をお寄せ頂ければ幸いです。

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